浜田浄「刻―光・影」

HAMADA Kiyoshi works 2013

2013年11月18日(月)-11月25日(月)

11:30~19:00(日曜日、最終日は17:00まで)

会場:8F 枝香庵

23-3-15浜田浄2013合板 アクリル ジェッソ91x91cm

25-6-18浜田浄2013合板 アクリル ジェッソ60x60cm

 「刻」には、キザミ・キザムなど、モノのキザミの行為を表す意と、観念の流れゆく時間をキザムの意があり、浜田の作品には、このほか、更にホリ(彫)や、加圧(コスリ)が加わる。モノのキザミの行為を、更に詳述すれば、細かくモノを切り刻むことや、木や石や紙などのモノに、キザミを入れる(付ける)、行為がある。後者は浜田の表現手法に連なる。この展覧会の「刻」のタイトルは、作家の浜田の創意と聞くが、このどちらに掛けたものかは知らないが、正にこの「刻」は、浜田の過去、現在にわたる作品制作の作家の心のありよう、その根源を端的に指し示している。
 絵画制作には、思考の前提として、通常目が大きな役割を持つ。対象のモノ、カタチを見る・観察する・色彩を識別する・空間を意識するなどなど。浜田の作品には、何をどう描くかの思考が当初から存在しない。平面(紙・キャンバス・ボード等)を、浜田固有の色彩(黒・赤・白)で、なめらかに幾層にも塗り重ねるという作業の反復。それを彫刻刀や特殊な工具で、削る・切り込む・ひっ掻く・こする・つぶす・抹消する・集積する・反復するなどの行為を、ストイックに、ただひたすらに重ねて、また自在に変容させて、点と線と面の詩情を探る手法である。また一本の鉛筆の線を幾層にも描き重ねることによって線が消え、漆黒に鉛筆で塗り固められた面が現出する。それは面をどう処理するかに終始している。これらの浜田の営為は、いわば作家の制作行為の痕跡を、結果として表面に残す作業といえないか。
 浜田は70年代に、合板に、赤のアクリルを塗り、その上を黒いアクリルで覆いながら、合板の中央部分に赤い線条の痕跡を現出させるといった作品をつくった。その流星の軌跡のような、単独または複数の水平の痕跡は、平行・均等に重なり、その線の左右の両端は、次第にほそまり、やがて先端で姿が消滅する。これを初めてシルクの版画で制作発表したのが、1977年に開催された「日本現代版画大賞展」銀座・松屋の会場である。この会場で私に衝撃を与えた作家が二人おり、その一人が浜田浄であり、残りの一人は文承根であった。浜田のその版画作品は、シルクで刷った黒色地の中央を一直線に走る、赤色の鋭い線が目を射る作品であった。浜田と私のその後の永い付き合いの始まりである。

2013.10.15 笹木繁男(現代美術資料センター主宰)

浜田浄(はまだきよし)


1937高知県に生まれる
1961多摩美術大学油科卒業


個展

1964おぎくぼ画廊(東京)
ルナミ画廊(東京)
1966夢土画廊(東京)
1971シロタ画廊(東京) '72 '77 '11
1975村松画廊(東京) '76 '77
1978コバヤシ画廊(東京) '85
1979ギャラリーモリス(東京)
椿近代画廊(東京) '85 '87
1980ギャラリー葉(東京)
1982かねこ・あーとギャラリー(東京) '83 '86~'88 '90~'01 '03 '04 '06 '07 '09
高知アートギャラリー(高知)
1983ギャルリーユマニテ(名古屋)
1984日辰画廊(東京)
1989養清堂リフレクション・ギャラリー(東京)
1995中村市中央公民館大ホール(高知)/ギャラリーおおひら(高知)
ぎゃらりー由芽(東京) '96 '04 '11 '14
1996ギャラリーYOU(京都) '97
湘南台画廊(藤沢) '98
1998ギャラリークリヨン(東京)
199923ギャラリー(東京)
アトリエUNO(東京)
2005ギャラリーA0(神戸) '08 '13
アトリエ倫加(高知)
2006「土火」現代美術(東京)
2009ギャラリーAmano(山梨) '10
Shonandai MY Gallery(東京) '11 '12
2010ギャラリー枝香庵(東京) '12 '13 '14 '17 '21 '23
2014ギャラリー川船(東京) '15
2015練馬区立美術館(東京)


グループ展

1964国際青年美術家展 ヨーロッパ・日本展(西武百貨店 東京) '77(東京都美術館)
1975ジャパン・アート・フェスティバル(上野の森美術館 東京/メルボルン) '76(上野の森美術館 東京/ロサンゼルス) '81(上野の森美術館、東京/ロンドン)上野の森美術館賞受賞
1976現代日本美術展(東京都美術館 東京/京都市美術館 京都) '77 '79ブリヂストン美術館賞受賞 '81東京国立近代美術館賞受賞
1977マイアミ・グラフィックス・ビエンナーレ(フロリダ)買上賞受賞
日本現代版画コンクール展(大阪府民ギャラリー 大阪)佳作賞受賞
1978クラコフ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)クラコフ美術館賞受賞 '80 '84
1979リュブリアナ国際版画ビエンナーレ(ユーゴスラビア)
21人の日本現代版画展(クリーブランド美術館 アメリカ)
19801980年日本の版画(栃木県立美術館 栃木) '85
1981第一回西武美術館版画大賞展(西武美術館 東京)優秀賞受賞
大阪府民ギャラリー受賞作家展(大阪府民ギャラリー 大阪)
1982所蔵品による開館30周年記念展 1.近代日本の美術(1945年以降)(東京国立近代美術館 東京)
かねこ・あーと82展―6人のドローイング(李禹煥、松谷武判、浜田浄、菅木志雄、真板雅文、川俣正)(かねこ・あーとギャラリー 東京)
1984今日の美術・収蔵作品展(東京都美術館 東京)
1985現代美術アートフェア'85(セントラル美術館 東京)
1986現代の自と黒(埼玉県立近代美術館 埼玉)
5人の作家による白と黒展(川俣正、北村亝、菅木志雄、松谷武判、浜田浄)(かねこ・あーとギャラリー 東京)
1987近代日本の美術:常設展示(東京国立近代美術館 東京)
1988グレンヘン国際版画トリエンナーレ日本現代版画特別展(スイス)
1990CROSS ONE 90(鴫剛、ゴトウシュウ、浜田浄)(椿近代画廊 東京)
1991線の表現 眼と手のゆくえ(埼玉県立近代美術館 埼玉)
1993収蔵作品展・リアルな美術・幻影の美術(東京都美術館 東京)
1994現代美術センター 20年の軌跡 コンクール受賞作品展(大阪府立現代美術センター 大阪)
国際コンテンポラリーアートフェア'94(NCAF)(パシフィコ横浜 横浜) '97(東京ビックサイト 東京) '99(東京国際フォーラム 東京) '01
1996特別展 版画の1970年代(松涛美術館 東京)
19983人の版画とドローイング(菅木志雄、松谷武判、浜田浄)(かねこ・あーとギャラリー 東京)
2003高知の美術150年の100人(高知県立美術館 高知)
あるサラリーマン・コレクションの軌跡―戦後日本美術の場所(周南市美術博物館、三鷹市美術ギャラリー、福井県立美術館)
2004韓国国際アートフェア(KIAF)(韓日) '05
2006アートとともに・寺田小太郎コレクション(府中市美術館 府中)
ブラック&ホワイト―黒のなかの黒(東京オペラシティーアートギャラリー 東京)
2012国際アートフェア kunstart2012(イタリア)
コレクション展 高知の戦後美術(高知県立美術館)


パブリックコレクション
東京国立近代美術館、東京都現代美術館、クラコフ国立美術館、栃木県立美術館、アーティゾン美術館、シカゴ美術館、高知県立美術館、練馬区立美術館、府中市美術館、岡崎市美術博物館、三鷹市美術ギャラリー、町田市立国際版画美術館、白木谷国際現代美術館、東京オペラシティアートギャラリー、クリーブランド美術館、大阪府立現代美術センター、ニューサウスウェールズ州立美術館

浜田浄