作家、作品との最初の出会いはおよそ８年前で、作家が本業を辞し、つくり手になった頃に、生活空間の中に見つけた草花をフロッタージュ手法で描いた「路傍の草花」（１９９３）と題された作品を見た時であった。目立たず決して派手ではないが、私の心をとらえて離さず、一瞬にして気に入り購入した。その後、「追っかけ」となり作品を蒐集し現在に至っている。その間、当館で２００８年、２０１０年に、それも各々３ヵ月間のロングランの展示を当館で行ってきて、多くの来館者から喜びの言葉をいただいた。また、来年には３回目の作品展も企画している。それ程作品、作家に惚れ込んでいる。椿﨑作品を短い言葉で記述すれば、「癒しの心」「素のままの美しさ」が表出されていることだ。しかも、もともと身近にある事象を描きつづけてきているので、鑑る者にとっては「あたりまえのこと」なのだが、その中には作家の「愛」「情念」と「ユーモア」が自然にそそぎこまれている。そこがたまらない。云うまでもなく「愛」「情念」「ユーモア」はヒューマニズムの原点でもあり、アートの根本精神でもある。本展は椿﨑の故郷である長崎五島列島の風物をモチーフ、材料にした作品を主に展覧している。なお、椿﨑は２ヶ月に一度は神戸から五島に行き、母親の介護に携わりつつ制作に励んでもいる。これ等作品には故郷に対する「想い」がひしひしと滲みでている。また、現在（いま）では忘れ去られつつある郷愁の念もみごとに描出されているのも確かである。ここに大きな魅力を感じている。
是非、御高覧ください。
神戸わたくし美術館 三浦 徹
