「ヒカリヨリハヤイモノ」Tosen Iwasaki

それまで無限だと思っていた速度というものに限界があるのだと知った物理の授業中、私の頭脳は大混乱に陥った。この宇宙においては光速より速い速度は存在しないのだという。
「それを証明する式はそんなに難しくありません」と教師が黒板に書き始めた時には天地がひっくり返るほどびっくりした。
無限だと疑いもしなかったものに限界があった。物理の法則上明らかなことなので、「もしかしたら見つかないもっと速い何かがあるのではないか」とか「頑張ったら光だってもっと速くなるのではないか」とか考えることさえ無駄らしい。
この世界は私の知らない法則できっちり動いているのだった。
今作は、表音文字であるカタカナで「ヒカリヨリハヤイモノ」と書いてある。
私たちの知覚できない世界にはきっと光よりも速いものが存在しているのではないか。
けれども、知覚できないものは結局のところ「無い」と同義語なのだ。
あるかもしれないけれど無いともいえるもの、そんな矛盾する存在を書いたものである。

作品詳細:

ヒカリヨリハヤイモノ

Tosen Iwasaki

Tosen Iwasaki