「記号と現代生活」の在り方に鋭い目線を向ける私は、日常の出来事や心の機微を形に残し、その瞬間を追体験するために、新聞印刷に使われるスクリーントーンの手法を用いて作品を書いている。
毎日WebサイトやSNSで大量に流される文字情報は、内容を淡々と伝えているように見えるが、シンプルかつセンセーショナルな表現で、大衆の思考や行動を操る。
私が見た文字情報は、客観的な事実の一部でしかない。
内容をどこまで信頼し、何を感じ取るかは、個人に委ねられる。
文字情報は急速に消費され、人々の記憶からすぐに消え去っていくが、一見するとくだらない些末な内容に価値を見出し、作品として昇華させる。
2022年9月5日に私が閲覧した、ある海外のニュースサイトのトップページを、スクリーントーンの手法を使って新聞用紙に書いた。
私は普段ニュースを国内ポータルサイトで閲覧することが多いが、この日に見た情報は、海外のニュースサイトの日本語版。普段目にする内容とは全く異なっている。
パソコンの画面上に現れるニュースは、出来事を淡々と伝えているようでいて、強大な求心力で大衆の思考や行動を操る。私が見た文字情報は、客観的な事実の一部でしかない。内容をどこまで信頼し、そこから何を受け取るかは、個人に委ねられる。
ニュースを知る手段は、新聞からWebサイトに変わった。新聞と異なり、アルゴリズムによって興味・嗜好に細分化された状態で提供されるWeb情報は、極私的なメディアだ。しかし、媒体や時代が変わっても、シンプルかつセンセーショナルな表現で、大衆を事象の複雑さから目を背けさせる手法は変わることはない。