江戸時代のかわら版をモチーフにしたかわら版シリーズ全4種。
合点承知之助見立
江戸時代のかわら版「見立番付」をモチーフに、手紙やメール、SNS等で現在やり取りされている「承知した」という意味を表す言葉を一覧表にした。
直接対面する機会が減り、その人自身がまとう雰囲気を読みづらくなった今、メールやSNS、チャットツールなどを用いたテキストコミュニケーションが、ここ数年で格段に増えた。
TPOだけではなく、自分の気持ちや趣味嗜好などの背景を伝えるためにも、表現手段は多岐に渡っている。
日々目まぐるしく消費されていく言葉は、1年後どれ位残っているだろうか。
文字打違ひ見立
江戸時代のかわら版の一種「見立番付」をモチーフにした作品。
「見立番付」は相撲番付表の体裁にならって作られた、現代の「何でもランキング」のような一覧表。
流行ものや名産品など、数多くの見立番付が作られた。
この作品は、実在した「文字書きちがひ見立」にヒントを得て、スマートフォンやパソコンの画面で見た、自分を含む多くの人による入力ミスの実録集である。
痛神鳥(つかみどり)
江戸時代のコレラ流行時に、世の中の陰鬱とした空気とは裏腹に、好景気に沸いた職業が描かれたかわら版「通神鳥」をモチーフにした作品。
令和の疫病「古呂奈」により、多くの人が悲しんでいるのを横目にしながら、古呂結構(ころけっこう)と喜んで鳴いている怪鳥「痛神鳥」のお話。
疫病は、汚い手で触ると伝染すると言われ、皆毒を消す汁をせっせと手に塗るようになった。
会話をすると伝染するとも言われ、皆口に布を当てるようになった。今は様々な色や素材があり、皆おしゃれを楽しんでいる。
外出したら伝染すると信じる庶民は、家にいながら、携帯の通信で逢引し、逢う時も透明な板を挟んでいる。
疫病が手を通じて伝染するのを嫌った結果、世の中から大判小判も一文銭もなくなってしまった。庶民は出かける時に疫病を患っているか否かを調べる。その検査をするための道具は飛ぶように売れている。
疫病を患わないように、庶民は皆、決められたアメリカの会社の注射を打っている。一昨年、この会社の売上は爆増した。
萬具梟(ばくろう)
江戸時代のかわら版で描かれた、災害や疫病流行に伴って起きる不可解な出来事を風刺した架空の動物「難獣」をモチーフにした。
令和の世には一家に一台必ずあるという、SNSの炎上から身を守ってくれる「萬具梟」というフクロウの置物。いつもは主のことを温かく見守っているが、ある言葉を伝えると誤作動して、主の悪事が世の中に全て暴かれてしまう。
やがて、世のあらゆる悪事を成敗する鳥として、民衆に崇められる存在に…。